”The Help” とは、お手伝いさん、家政婦、メイドのこと。ビートルズの歌ではないです(笑)1960年代の公民権運動が行われていた時、ジムクロウ法(南部では新たな法律が作られ差別が続きました)が残る中、家政婦として働く黒人女性達と雇い主である白人女性達を中心に描いた映画です。内容は、黒人差別だけではなく、この時代の、女性が社会に進出して行くことが”とても難しい”男女格差も描いています。力強く生きる女性達の姿に私は励まされました!!!
映画公開前は、私はてっきりウーピー・ゴールドバーグとシシー・スペイク(写真右)主演の「ロング・ウォーク・ホーム」(1994年日本公開)のリメイクかと思っていました(ちなみに今ではサブスクとかにはないので観るのが難しいかも)
それか、リメイク版じゃなくでも、ローザ・パークスのバスボイコットに関連する映画かとてっきり思っていましたが、全く別の脚本でした!ただ、シシー・スペイクが出演しているので、「ロング・ウォーク・ホーム」をオマージュしているな、と感じたのはきっと私だけではないはずです。
「The Help」の舞台はミシシッピー・ジャクソン。5年くらい前に、ジャクソンにあるキリスト教神学校に在学中の友人家族宅に、1週間滞在したことがあります。映画の一場面でも出てくるCity Hallにも連れて行ってもらいましたが、観光スポットが少ない街でしたね。学校近辺は治安が悪く(黒人の人たちが多く住む地域でした)友人曰く、たまに銃声が聞こえる、という事で1人で学校敷地内から出るのは絶対にNG。敷地内でジョギングをしたり、ゆっくりと過ごし、南部フードを楽しみ、メンフィスにも行ったりしました。
映画ではミシシッピー出身でNAAPC(全米黒人地位向上協会)支部局長、 メトガー・エヴァースの暗殺(1963年6月12日)が報じられるシーンが描かれていましたね。これをきっかけに公民権運動に携わるリーダーたちが立て続けにに暗殺されていきます。
映画に出てくるメイド達は、家事だけではなく子育ても任されていました。それはほぼ母親としての役目で、食事を与えたりオムツを変えるのはもちろん、一人の人間としてのアイデンティティ、自立心や自尊心を教えるという、本当に大切な役目を果たしていたことを、この映画は描いています。
働く女性の先駆けとも言えるスキーター(主人公の若い白人女性)は、子供の頃から、黒人のメイドであり乳母のコンスタンティンに励まされ教えられます。
もう1人の主人公、メイドのエイブリーン(写真右 ヴァイオラ・デイビス)は、雇われた家で、自分のことに忙しく子育てをしない母に代わって、
「あなたは優しい子、あなたは賢い子、あなたは大切な存在」
”You Is Kind, You Is Smart, You Is Important” と、白人の子供を抱き、世話をして教えます。
きっと自分の子供にも時間をかけて育てたかったんだろうな。でもメイドとして働かなければ生きていけない現実です。
それにしても、こんな小さい時から、しっかりと言葉で励まされ、育て教えてもらえていたら、人生違ったかな、、、と思わされた1シーンでした。
話戻って、しかしエイブリーンは、そんな雇い主の子供達も「いずれ親と同じになる」と思っています。実際に、大人になっていくと、親や周りの影響で結局黒人差別をする人間に変わってしまうという悲しい現実が続いていました。映画「Selma(邦題グローリー明日への行進)」でもMLK(マーティン・ルーサー・キングJr)が最後に演説でそのことを語っていたのを思い出します。子供は大人の”嘘”に染まって同じ大人になっていくのです。
そんな状況の中、彼女に変化を与えたのが教会のシーン、牧師のメッセージでした(ちなみに前にふれた「Selma」のMLK役のデイヴィッド・オイェロウォが牧師役!)
聖書の出エジプト4章から、
「勇気とは、モーセがうまく口がきけなかったように、肉体の弱さ超えて正しい行いをすること。正しい行いとは、人を愛すること。イエスの十字架の犠牲の愛のように、自らを危険にさらす覚悟で愛すること。同胞のため、兄弟姉妹、隣人のために。そして敵をも愛すること!敵を愛せたら、それが勝利です!」そして聖歌隊が「Victory is mine」を歌い始めます。
「Victory is mine」Youtube↓
「今日、勝利は私のもの!私はサタンに退けと言った!勝利は今日、私のもの!」
Victory is mine, Victory is mine, Victory today is mine.
I told Satan to get thee behind, Victory today is mine.
最大の愛は”赦しの愛” 。これって本当に難しいですよね。
この牧師のメッセージで、エイブリーンは、スターキー(写真左)が書こうとしている黒人差別問題を告発する本で、証言すると言う重要な決断しました。
真実を言う事で自分の身の危険があるかもしれない。けれど、自分の息子が冤罪で逮捕され亡くなるという不当な扱いを思いつつ、同胞のために、そしてきっと自分自身のためにも立ち上がります。
多くのメイド達の勇気の発言によって本は出版され、好評を得ますが、ヒーリー(差別賛成主義の女性)が本に書かれた”パイ事件”の侮辱を晴らそうと躍起になります。✴︎このパイ事件はすごかった(汗)映画観てね
ヒーリーは他人に色々な圧力をかけ、自分の思い通りにコントロールします。スターキーとは正反対の白人女性で、黒人差別を積極的に擁護し、身近で苦しんでいる黒人の子供を助けません。でも自分の印象を上げるために、アフリカの子供達を支援する活動を平気でしてしまう、そんな女性です。
そんなヒーリーに、ついにエイブリーンは堪忍袋の尾が切れて、
「Godless woman」と言い放ちます。つまり神への信仰を持たない女性という意味。
日本語訳では「あんたは悪魔だ」と訳されていました。どう言った意図で訳したかはわかりませんが、悪魔って言っちゃうの、かなり強烈ですよね。
「悪魔」はホラー映画に出てくるような角や牙が生え、人間を噛み殺すような化け物のような存在だけじゃないと、聖書では言っています。悪魔は人の心を食い物にします。したたかで、人間の心を騙し、自分は価値のない存在だととか、人より優れているとか囁きかけ、人が憎み合い争いあうようにしかけます。家族や人言関係を分裂させます。人を精神的にも霊的死に追いやる存在です。
ヒーリーも犠牲者だったのかもしれません。いずれにせよ、信仰深いと思っていた彼女にとって、「Godless」は打撃のある言葉だったでしょう。その後に、「あなた、そんなんで疲れない?」とも言われてしました。彼女のように周りの人間を私利私欲のために利用し、心から信頼できないで、嘘をつき続けるのは疲れることだと思います。悪魔に騙されないようにしなきゃですね。
本で告白したエイブリーンは、その事によってメイドをクビになります。でも、仕事を失った後悔よりも、「赦す」このとの難しさを心の中で自答します。
私は、こんな言葉を聞いたことがあります。
「赦せない思いを持ち続けているのは、自分で毒を飲み続けているようなものだ。」
それほど赦せない思いというのは、自分自身にとって良くない、という事です。だから自分のためにも相手を赦した方が良い。
でも、この映画の彼女達の立場になったら、自分を虐げる人々を赦すこと、それは簡単なことではないと思います。
しかし、新しい人生を歩んでいくために「赦し」は、必要なことなんですね。
エイブリーンは「いずれにせよ真実を語ることで解放された」と言い、前向きに新しい人生を歩き始めます。まっすぐな道をただひたすら前進し続けるエンディングです。
映画の流れでは、息子の遺言通り、エイブリーンはこの後、作家になっていく感じですね。
ちなみに、エンディングロールで流れたメアリーJブライジが歌う主題歌の後に流れるのはMavis Stapleの 「Don’t knock」でした!
Youtube↓
このシーンが好きです!
【まとめ】
人の優劣は、決して肌の色や性別、身分で、決めることができない。平等な権利を訴える事が今よりももっと難しい時代に、それでも力強く生きた女性達がいたことに励まされました。環境や相手のせいにするのではなく、自分のできること、しっかりできるようになりたいです。
そして、最も大切なのは、他者に対する犠牲の愛と赦し。
人は試練と逆境の中でこそ、大切なものを見出すことができる。牧師のメッセージに、この映画のテーマが込められていたかと思います。
行動にしていくことは、話す事、書く事の何百倍も大変で難しい、と思う今日この頃です。
見失ってはいけない、、、そう痛感した映画でした!
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